この令和の時代になっても、管理職には残業代を払わなくてもいいと思っている中小企業があるんですね。結論から言って、管理職だからという理由で時間外手当を支払わないのはダメです。
昔は「管理職は残業代をもらえない」は当たり前だった
30年以上前は、大企業であっても、課長になると残業代がもらえなくなるということは一般的でした。私が、入社した会社でも当然で、特に疑問に思っていた人はいなかったと思います。
なぜ、管理職なると残業代がもらえなくなるの?
そもそも、なぜ「管理職」になると、残業代がもらえなくなるという理屈が当たり前のようにまかり通っていたのでしょうか?
それは、以下の理由なんです。
労働基準法が、41条2項で「管理監督者」について、割増賃金の支払いを規定する同法37条の適用を除外しているからです。
つまり、支払規定が除外されているから、支払わなくても良い。という理屈です。
「法律に払わなくていいって書いてあるんだから、払わなくてもいいんでしょ。」
以上、お終い。議論終了。
ってことになりそうです。
しかし、よく見てください。法律には、「管理監督者」と書いてあって、「管理職」とは書いてありません。
「管理監督者」=「管理職」?
この「管理監督者」と部長、課長といった「管理職」とは、同じ意味なのでしょうか?
同じであれば、「払わなくていい」以上、お終い、議論終了です。
では、そもそも法律は、なぜ「管理監督者」には残業代の支払いをしなくても良い。と規定しているのでしょうか?
「管理監督者」、つまり事業主に代わって他の労働者の労働時間等の労務管理を行う地位にあるような者は,自分の労働時間を自分でコントロールすることができる地位にあり、通常の労働者よりも高い待遇を受けているのが一般的です。
そのため,そのような労働者に対しては、労働基準法では労働時間や休日の規制の適用がなく、残業代や休日手当の支払いも求められないからです。
そうであれば,「管理監督者」というためには,単に肩書が管理職であるというだけではダメそうですね。
したがって、
答は、単純に「管理監督者」=「管理職」ではない、です。
どんな「管理職」が「管理監督者」と言えるのでしょうか?
「管理監督者」と認められるためには、
平成14年の札幌地裁の判決では
- その従業員が、雇用主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められているかどうか。
- 自己の出退勤を始めとする労働時間について一般の従業員と同程度の規制管理を受けているか。
- 賃金体系を中心とした処遇が、一般の従業員と比較して、その地位と職責にふさわしい厚遇といえるか
など具体的な勤務実態に即して判断するものとしています。
(新聞を賑わせた平成20年の東京地裁の日本マクドナルド判決も、ほぼ同様基準を踏襲しています)
つまり、誤解を恐れないで言うと
- 経営に口出す権限があるか
- 遅刻や早退をしても怒られたり、給料を引かれないか
- 他の従業員と比べて給料が高いか
を総合的に判断することだと思います。
ブラック企業
したがって、何の権限もないただの課長や部長では、「管理監督者」とは言えないわけです。世の中に、1~3に当てはまる、部長とか課長といった肩書の人はあまりいなのではないでしょうか。
ましてや、「あいつに残業代を払うのもったいないから、課長にしちゃぇ!」
なんてことは論外なわけです。
以前、労働法に詳しい弁護士さんは、
「中小企業、特にワンマン経営の会社では、マクドナルド判決の言う「経営者との一体的な立場」に当てはまる従業員がいるとは考えにくいので、「管理監督者」と認められるケースはほとんどないと思います」とおっしゃっていました。
ハッキリ言えば、中小企業であれば、そんな人は役員になっているはずなので、部長や課長だからといって残業代を払わなくてもいいというのは、ほとんどのケースで間違いと言えるということです。
ちなみに、深夜時間の割増賃金の支払義務は免れないとされているので、「管理監督者」であっても深夜手当を支払わないのは明らかな間違いです。
処方箋
全く残業をしていないか、残業時間を手当に換算しても、管理職手当の方が多い場合は、騒いでも得は無いです。黙っていたほうが賢明です。
残業時間や休日出勤が多い場合でも、この時代にまだこのようなことをやっている企業の経営者が、「間違いなの?これから払うよ。」とはならないでしょう。(おそらく、一般従業員も〇〇時間でカットとか固定残業代のみで、時間オーバー分は支払ってないと思います)
やはり、波風を立てない方がいいのかもしれません。
とはいっても、タイムカードのコピーとか記録だけは必ず残してください。記録を残しておけば、退職時に請求することも可能になります。(2020年4月1日以降に支払われる賃金については3年間遡ることができます。将来的には5年になります)
また、退職代行の弁護士さんに頼めば、自分で交渉する必要もないので嫌な思いもしません。退職後も、その会社の方とお付き合いする場合はお勧めしませんが、別に構わない場合は、頼むのも手ではないでしょうか?
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